オリーブの樹
ずいぶん昔の話、高峰秀子の主演による二十四の瞳と云う映画が大ヒットしたとき、田舎町の映画館に見に行ったことがあった。島の分教場には女の先生と十二人の子供たちが別れを惜しんで泣いていた光景が思い浮かんだ。それ以来小豆島の光景が目に焼き付いて忘れられなかった。
社会に出てからの後、一人旅の途中に小さな船に乗って小豆島に渡った。島のいたる処にオリーブの畑が広がっており温暖な気候とともに緩やかな時間が過ぎていった。その頃はオリーブの木なんてハイカラな言葉もあまり解らなかったが、それがオリーブとの出会いだった。古くから多様な力を持つ果実として歴史的にも評価されてきているのはご存知の通り。それから五十年余・・・・・
旧約聖書の「ノアの方舟」では洪水が収まった際、ハトがオリーブの枝を咥えて戻ってきたことが記されて以来オリーブは「聖なる木」「知恵の果実」として大切に育てられている。このエピソートからオリーブは平和を表すものと考えられられるようになり、現代では国際連合の旗のデザインにも使われている。
エルサレム旧市街の岩のドームから東方を望むと市街地のはずれの方に緑の森が見えたが、その辺一帯はオリーブの大木が入道雲のように競りあがり照り輝いて見える。その先では依然として解決のできない紛争の場所パレスチナに接しているが、その壁はあまりにも分厚いものだと思う。
令和 元年5月 八 大
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