地獄の釜の蓋が開く

 私たちが子供の頃「藪入りという言葉が残っており前日の15日はお盆と云う重要な祭日でし

た。そこで奉公先や嫁入り先の用事を済ませ、その翌日の16日が実家の行事に参加ができるように休みが与えられたようです。現在のように定休日がなかった時代に、正月と盆の藪入りは奉公人たちにとっては大変貴重で待ち遠しい日でした。また親元に帰れない者も芝居見物などに出掛け年に二回だけのお休みを楽しんでいた。嬉しいことが重なったとき「盆と正月が一緒に来たよう」と云いますが、昔の奉公人にはこの2つの藪入りは本当に楽しみだったに違いありません。

 今日8月16日には決まって茗荷の葉でくるんだ炭酸饅頭をおやつに食べさせてもらったことを思いだいました、遠くなった昔の話です。何でこんなお呪い(おまじない)のようなことをして・・?と思いながらも食べることの方が先だった。この地方の風習で酷暑に負けないお呪いと疫病除けの意味もあり有難がって食べていましたね。

戦後世の中の労働スタイルが大きく変わって日曜日などの定休日が出来ると藪入りは遠く忘れられて行きましたが藪入りの伝統は正月休みや盆休みの規制として残っていて、最近では大型連休や最近ではコロナ禍と相まってGO-TOキャンペーンと云う言葉まで臨時に拡大して来ていますね。

また「地獄の窯の蓋が開く」云われるこの日は、お盆の時期、霊が里帰りして地獄にいないので地獄番の鬼も休みです。その頃に畑の土に耳をつけると、ゴーッという地熱の沸くような音がするそうで、地獄の窯の蓋が開いて霊が飛び出してくるので、仕事をしてはいけない日とされたそうです。仏教では藪入りの日を「閻魔の賽日」といい「地獄の蓋が開き亡者も責め苦を逃れる日」であり「罪人を責めていた地獄の鬼たちさえもこの日は休むから、人も仕事も休む」と考えられたのでしょう。

令和2年  文月           八 大

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