蚕はカイコガと云う「ガの幼虫」ですが、「お蚕様」と呼ばれるほど、農家にとっては貴重な現金収入源だったそうです。蚕はミツバチと並んで飼育される珍しい昆虫です。そのため数え方も牛や馬と同じく一頭二頭と数えていたそうです。
飼育の目的はもちろん天然繊維の絹糸の採取、蚕の作った繭から取れた高級繊維で着物の材料になるだけでなく、海外への輸出品として日本経済を支えていました。けれども、女工哀史と呼ばれていたように、絹糸の製糸工場の女工さん達に過酷な労働を強いることになっていました。
日本の絹糸は丈夫で上質であり、卵や蚕も寒さに強かったため、ヨーロッパから遠路はるばるやってきて、卵を高い値段で買いにくる商人もいたようです。取れた絹糸では繭から取れる正絹(しょうけん)が最上級で、丸繭、くず繭とランく付けられていたそうです。最上級の絹糸から作られるのが紋付きの訪問着、繭から作られるのが紬などでした。
しかしどちらにしても庶民には手の出ないもの高級品で、庶民は綿の着物を着ていました。しかし戦後になって安く強く肌触りのよい化学繊維が登場すると、養蚕業は衰退してしまいます。今では一部の着物愛好家と高級洋服の生地で使われる伝統工芸の範囲にとどまっているそうです。
また、長野県の信州地方では、蚕が作る繭の中から取れた蛹(サナギ)は貴重なタンパク源として佃煮にされた瓶詰が販売されているそうです。
お蚕さん |
蛹の瓶詰 |
皐 月 八 大
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