笠森寺(四方懸崖造り)

 坂東三十一番札所は千葉県の長南町に日本でも現存する唯一の珍しい四方懸崖造りの建物が国の重要文化財に指定されている。由緒書によると延暦三年(784)に伝教大師が創立し長元(1028)元年に後一条天皇が飛騨の匠に作らせたといわれているが、なんと山のてっぺんにこんな御堂を立てたのか不思議な建築物であります。七十余段の階段を上がって廻縁に出れば四方の眺望は素晴らしく眼下に房総の山々が広がる。
 一般的に懸崖造りと云えば清水寺に代表的されるように一面は山側に寄り添っているように見えるので安定感も感じるが、四方が懸崖となるとお城の天守閣が山のテッペンにあるようで雨風のことを思うと居心地が良いものではなさそうな気分です。降り際に下部の構造を覗いて見ると十分な仕組みが出来ていることを確認して不安は一掃された。

 階段を降り境内の休憩所に立ち寄ると何やら有難い文句がいろいろとありました。

 ◦ 若木の花のみずみずしさ、老木の花の気品
 ◦ 今が幸せと思わないと、一生幸せになれないよ
 ◦ 楽しい人は何でも楽しむ、苦しむ人は何でも苦しむ
 ◦ 悩むことは悩みなさい、しかし朝が来たらやめなさい
 ◦ 水は低い処に溜まるように、背を低くすれば人は自ずから集まる

気ぜわしさの中で忘れていたことを思い知らされた一服の涼風が通り過ぎて行った。

                                                          平成30年1月     八大


















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