出穂水(でほみず)って言葉を聞いたことありますか? あまり聞いたことがない言葉ですが、昨日古利根川沿いの小さな田んぼにポンプで水を汲み上げていた農家のお百姓さんがいました。連日酷暑日が続いていますが「この時季一番大変なことは水の管理なんです」朝夕の水の管理の良しあしによってお米の味が変わるんですと云って話をしてくれました。此の田んぼも今ではスイッチを入れれば水が上がってくるが、昔は水車(みずぐるま)を足で漕いで水を確保していた頃が昭和の初めごろまであったんです。
その水車を踏車(とうしゃ・ふみぐるま)と呼んでいて、日本においては江戸時代中期以降に普及しておりました。この古利根川の付近でも足踏み揚水機は古くからの農家や古民具の展示場などで見られます。人が車の羽根の上に乗り、羽根の角を歩くことで車を回し、水を押し上げるからくりで使われており、田んぼに入るにも、舟(サッパ舟)で移動していたそうです。今でもその風景は遠くは東南アジアの稲作地域にも見うけられます。
私達日本の稲作農家にとって一番大切なことは水の管理だそうで、日照りの頃の水争いはその地域の中でも大変な騒動になったことが語り継がれて来ておりました。またお米の品種がコシヒカリをはじめひとめぼれ、ササニシキなど評判の種類が品種改良されて美味しいご飯が食べられますが、何と云っても田んぼの水の管理によって愛情をかけて出来たお米が美味しいと古利根の古老が熱く語ってくれました。水の管理(加減)は一番大切であるとのことです。
令和2年 文月 八 大