百段階段 目黒雅叙園

   先日久しぶりに渋谷に降り立ったが相変わらずの
人のうねり、駅周辺の変わりようは言葉にならない。
どこか落ち着けるところはないものか・・? この巨大な地下空間から離れることが先決である。

 目黒へ出て雅叙園へ向かったがすぐ近くだと思っていたが曲がり道を間違えたからか坂を下ってようやく玄関に辿り着いた。三十年以上も前に訪れたイメージとは想像以上の変わりようで違和感すら感じ驚いた。

 眺める余裕もなく目指す百段階段へ進む。ありました目の前に長く伸びている九十九段は以前訪れたことのある奈良長谷寺の回廊の記憶が蘇ってきました。

 細川力蔵と云う人は石川県から身を起こし東京芝浦で料亭を開いていたが、新たに目黒の地に土地を買い求め純日本式料亭「雅叙園」を開業し料理で味を楽
しませる他、目でも食を楽しんで頂くとい
う考えで階段状の宴会場を考え出し昭和6年に開
業させました。


 建物は傾斜地を活用した六層の作りになっており、それぞれの宴会場は豪華絢爛な螺鈿細工が施されているほか天井や欄間には当代屈指の名のある画家たちが飾り上げた美の世界が描かれている。まさにその当時の竜宮城と呼ばれていた空間です。

 どこか日光の東照宮のゴテゴテした雰囲気はあまり馴染めない思いもありますが、昭和初期で贅をつくした作品と見れば、これもまた素晴らしいものでした。



 




平成31年  4月

             八 大




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