紺珠

紺珠(かんじゅ)とは
 私は二十歳の頃詠んだ、森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』の文中に紺珠という備忘録を持っていることに興味を持ちました。その後いろいろ手を尽くして紺珠の意味を調べて結果・・・それにあやかり自分の備忘録として半世紀以上名前を借りて使わせて頂いております。
紺珠と張説
 張説という少年は勉強と人助けが大好きであった。ある日張説が助けた老人は青色に薄い紅が浮かび上がる珠をお礼に与えた。最初は貰うのを断ったが老人はこの珠の説明を始める。
 老人が云うには紺珠は勉強や執筆活動に於いてこの珠を手に握っていると自分の記憶について思い出すことが出来るという。更には日頃から愛でていれば神経が磨かれ一度見たことは絶対に忘れることなく思い出せるというのだ。老人はそう伝えた後紺珠を彼の手に捻じ込むように渡し虚空に消えた。
 老人が消えるのを見て張説はこれは神が私に与えた報いなのだと思った。それ以降彼は大切に死ぬまで肌身離さず紺珠を携帯した。その後の彼は朝廷の役人になり、筆においても文においても詩においても中国中にその名を轟かせたという。(当時のメモより)
 今の時代紺珠など持たなくても何十年もの歳月を積み重ねた日記が、例えばブログのようなデータになっていれば検索機能を使ってすぐに当時の言葉にたどり着くことが出来る。それどころではないインターネットは全世界の人々の記憶を、何の労もなく自らのモノとすることが出来る。
 これからもインターネットという巨大な記憶装置は私たち人類の生活にとって無限の可能性をもたらしてくれることでしょう。                                                                 平成28年2月  八大