雨水の頃 草木萌え動く

  日本には昔から、太陽や月のめぐりを季節や月日などを知る手掛かりにしてきました。地球が太陽のまわりを一周する時間の長さを一年とするのが太陽暦です。
一方旧暦では新月から次の新月になるまでを一か月とするのが太陰暦です。明治五年に改暦の詔が出されるまで長い間したしまれてきた昔ながらの日本の暮らしの暦です。

季節には太陽暦の一年を四等分した春夏秋冬の他に二十四等分した、二十四節気と、七十二等分した七十二候という、細やかな季節を感じ取り、農業を中心とした生活を営んできました。七十二候の中には「桜始開く(さくらはじめてひらく)」や「雪下出麦(ゆきわたりてむぎいずる)」「熊籠穴(くまあなにこもる)」など、自然現象をそのまま名前にしたものが多く、生命を身近に感じることが出来るものです。

二十四節気、七十二候のその先に私は自分の言葉として雑記を加えたい。あちこちに芽吹く草花、春に先立って芽吹く庭木、初物をつまむ香気、その時の気分で記す雑記を書き留めることこれも又楽しい。

次第に和らぐ陽光の下、草木が芽吹きだすころに冬の間に蓄えられていた生命の息吹が外に現れ始めるころが暦でいう雨水の頃ですね。
気が付けば菜花の黄がそろそろ目に付くころ、花開く前のつぼみはほろ苦くその瑞瑞しさは春の走りを感じさせます。

この時期仏壇には毎年恒例のまだか細い桃の花が申し訳なさそうに活けられており隣にお雛様の来るのを待っておられる感じです。
ひな祭りには欠かせない蛤のお吸い物もこの時期食材の名脇役である、菜花との組み合わせは何処からも異論をはさむ余地はないだろう。

雨水のこの時期降る雨を、木の芽お越しと云って植物が花を咲かせるための大切な雨で木の芽が膨らむのを助けるように降るからその名で呼ばれたという。植物にとっては一雨ごとに春が来ることを感じます。こんな時にも私が日本人に生まれて良かったなあと思える季節です。


 令和2年  弥生       八 大 
















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